個人事業主が払わなくてはいけない「住民税」っていくら?計算方法と事例でわかりやすく解説。

 

 

目次

    1. 住民税とは?個人事業主も払うべきか?
    2. 個人事業主の住民税の計算方法
    3. 【年収別】住民税の計算例
    4. 個人事業主の住民税は経費になる?
    5. 個人事業主の住民税はいつ納付する?
    6. 個人事業主が住民税を納付する方法
    7. まとめ

 

 

住民税とは?個人事業主も払うべきか?

個人事業主として開業すると様々な税金を納める必要がありますが、住民税も納めなくてはならない税金の一つです。その他にも納めなくてはならない税金として、所得税、消費税、事業税がありますが、今回は住民税について解説していきます。 そもそも住民税とは、役所や公共施設の運営、水道、ごみ処理、学校など、私たちの生活に不可欠な行政サービスを運営するために充てられる税金で、自身が住んでいる地域に納める地方税です。

その内訳には居住している市町村に納める市町村民税と、居住している道府県に納める道府県民税があり、納付の際は一括して市町村に支払います。 なお市町村、道府県という名称ですが都および区も同様の運用です(※総務省ホームページより)。 会社勤めをされていると、給与から毎月天引きされるのであまり気づかないかもしれませんが、個人事業主は自ら計算して正確に納める必要がありますので注意が必要です。それではここからは住民税の仕組みと計算方法について解説していきます。

 

 

個人事業主の住民税の計算方法

住民税には一律の金額を求められる「均等割」と所得に応じて金額が決まる「所得割」とがあります。この2つを合算したものが住民税の金額です。 ■住民税の計算方法  均等割 + 所得割 = 住民税額

 

均等割

均等割は地域ごとに一律で金額が決まっています。これは「地域社会の会費」的なものとして考えられており、その税額は5000円(市町村民税3500円、道府県民税1500円)が標準です。 但し地域ごとにその状況を鑑みて、標準金額をもとに自治体の裁量で金額が変わります。詳細はお住まいの自治体のホームページなどで確認してみてください。 ■[参考]主要都市の均等割(2023年版)

 道府県民税市町村民税合計
札幌市(北海道)1500円3500円5000円
仙台市(宮城県)2700円3500円6200円
東京都1500円3500円5000円
横浜市(神奈川県)1800円4400円6200円
名古屋市(愛知県)2000円3300円5300円
大阪市(大阪府)1800円3500円5300円
広島市(広島県)2000円3500円5500円
福岡市(福岡県)2000円3500円5500円

※2023年度までは、東日本大震災を踏まえた防災費用を確保するため、道府県民税・市町村民税ともに500円ずつ引き上げられています。

 

所得割

所得割は前年の課税所得に対して、定められた税率をかけたものから、税額控除額を引いて計算します。

■所得割の計算方法  

前年の課税所得 × 税率 - 税額控除 = 所得割

所得割の税率は均等割と同様に標準税率が設定されており、市町村民税6%、道府県民税4%の合計10%が標準です。こちらも各自治体の裁量で税率が変わるので、お住まいの地域の税率が何%なのかをしっかりと把握しておきましょう。

 

■課税所得とは?

前年の1月~12月までに得た所得の中で、課税の対象になる分を指します。具体的には収入から必要経費と、国が定める所得控除の分を引いた金額が課税所得となります。

 

[住民税における所得控除など]

控除の種類控除を受けられる要件
雑損控除災害または盗難もしくは横領によって、生活に必要とされる資産に損害を受けた場合。
医療費控除1月~12月の間に本人または生計を共にする配偶者、親族のために支払った場合。
社会保険料控除社会保険料の支払いがある場合
小規模企業共済等掛金控除小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合
生命保険料控除生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った場合
地震保険料控除特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料または掛金を支払った場合
障害者控除本人、同一生計配偶者または扶養親族が障害者に当てはまる場合
寡婦控除寡婦である場合
ひとり親控除ひとり親である場合
勤労学生控除本人が勤労学生である場合
配偶者控除本人の合計所得金額が1000万円以下で、同一生計配偶者の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)の場合
配偶者特別控除本人の合計所得金額が1000万円以下で、同一生計配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下の場合
扶養控除本人と生計を一にする扶養親族がいる場合
基礎控除納税者本人の合計所得金額が2500万円以下の場合:43万円
青色申告特別控除青色申告で確定申告した場合 複式簿記で記帳し、e-Taxで提出した場合:65万円 複式簿記で記帳して提出した場合:55万円 上記に該当せず提出場合:10万円

※項目は所得税と同じ場合でも金額や要件が違う場合があるので注意してください。

 

■税額控除とは?

税額控除は課税所得に税率をかけた後に一定金額を控除する制度です。住宅ローンの支払い、特定の団体への寄附などにあたって発生する場合があり、主な制度としてふるさと納税などが該当します。 所得控除と混同されがちですが、税額控除は税率をかけた後に控除されるという点が大きく異なりますので注意が必要です。 またこれとは別に調整控除というものもあり、一定の所得がある方は最低2500円が控除されます。この金額は所得控除の一部の金額と課税所得によって変動します。もしも所得控除がたくさんある場合には細かい計算をすることがおすすめです。詳細な計算方法は各自治体のホームページなどに記載されているのでご確認ください。

 

 

【年収別】住民税の計算例

ここまで住民税の概要と計算方法について解説してきました。ここからは年収別に概ねいくらくらいの住民税が発生するのかを見てみましょう。 なお下記計算式はあくまでシミュレーションです。実際には社会保険料控除をはじめ、控除が受けられることが非常に多いため、通常よりも課税所得額が高めになっていますのでご注意ください。

 

[収入500万円、経費200万円の場合]

※東京都在住、所得控除は基礎控除のみの場合

課税所得 = 500万円 - 200万円(経費) - 43万円(所得控除) = 257万円

所得割 = 257万円 × 10% - 2500円(調整控除) = 25万4500円(道府県民税:10万1800円、市町村民税:15万2700円)

均等割 = 5000円(道府県民税:1500円、市町村民税:3500円)

【合計】25万9500円(道府県民税:10万3300円、市町村民税:15万6200円)

 

[収入1000万円、経費200万円の場合]

※所得控除は基礎控除のみの場合

課税所得 = 1000万円 - 200万円(経費) - 43万円(所得控除) = 757万円

所得割 = 757万円 × 10% - 2500円(調整控除) = 75万4500円(道府県民税:30万1800円、市町村民税:45万2700円)

均等割 = 5000円(道府県民税:1500円、市町村民税:3500円)

【合計】75万9500円(道府県民税:30万3300円、市町村民税:45万6200円)

 

[収入1200万円、経費400万円の場合]

※所得控除は基礎控除のみ、青色申告特別控除を最大で受けられる場合

課税所得 = 1200万円 - 400万円(経費) - 43万円(所得控除) - 65万円(青色申告特別控除) = 692万円

所得割 = 692万円 × 10% - 2500円(調整控除) = 68万9500円(道府県民税:27万5800円、市町村民税:41万3700円)

均等割 = 5000円(道府県民税:1500円、市町村民税:3500円)

【合計】69万4500円(道府県民税:27万7300円、市町村民税:41万7200円)

 

 

個人事業主の住民税は経費になる?

個人事業主が支払った住民税は残念ながら経費にはなりません。住民税は事業者個人に課税される税金であり、事業にかかる経費としては認められないためです。 ただし、事業用の口座から振込支払いをした場合には帳簿に記載が必要なため「事業主貸」として処理するのが望ましいです。

 

 

個人事業主の住民税はいつ納付する?

個人事業主の住民税は確定申告後の6月頃に、お住まいの自治体から住民税額が計算された通知書が届きます。その通知書に従って納税することになりますが、一括で納付する場合は6月末。分割にする場合は6月末、8月末、10月末、翌年1月末の4回に分けて納付します。 一般的に会社員の場合は6月~翌年5月にかけて分納しますが、個人事業主は毎月納付ではありませんので、急な出費に対応できないという事がないようにスケジューリングしておきましょう。

 

 

個人事業主が住民税を納付する方法

住民税の納付は通知書と一緒に送られてくる納付書を使用して支払うのが一般的です。各金融機関・郵便局の窓口やコンビニで対応してもらうことができます。また口座振替やPay-easyによるインターネット決済、バーコード決済(スマホ決済)、クレジットカード決済などにも対応している場合があります。 対応の可否は自治体によって異なりますので、ホームページや通知書に記載されている説明書きをご覧ください。

 

 

まとめ

住民税は生活に密接にかかわる重要な税金です。そのため個人事業主も社会の一員として必ず納付する必要があります。 所得税と異なり各自治体が計算をして通知してくれるので、自ら計算する手間を省くことは可能ですが、納付の管理は自ら行う必要があります。通知から支払いまでの期間が短いのでお金が用意できないというようなことがないように、計画的に準備を進めることがおすすめです。

 

 

 

 

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