個人事業主が支払う税金の種類は?確定申告のやり方と節税対策について

 

 

日本における個人事業主の数は増加傾向にありますが、事業が忙しく税金の支払いについて正しく理解できていない方も多いのではないでしょうか。 収益を得ることも大切ですが、それ以上に税金の基本的な知識を知ることも、事業を存続させるための重要な取り組みの1つです。

なぜなら、税金を理解することで、法令順守が確保でき、節税対策にも繋がるためです。 そのためには、個人事業主が支払う税金の種類を理解することは、納税義務と共に財務管理の一環として非常に重要です。 しかし、税金の種類や計算方法を正しく理解するのは、事業をやりながらだと後手になってしまいがちです。 本記事では、個人事業主が支払う税金の種類と、確定申告で活用できる節税対策について詳しく解説します。

 

 

目次

    1.   
    2. 個人事業主と税金の基本理解
    3. 個人事業主とは?
    4. 個人事業主が払う税金の種類
    5. 個人事業主の3つの節税対策
    6. まとめ

 

 

 

個人事業主と税金の基本理解

個人事業主にとって各種税金の支払いは避けて通れません。 税金に振り回されず、より効率的に事業を進めるためにも、本章で税金の種類とそれぞれの特性を理解しましょう。 具体的に、個人事業主が支払う税金の種類は下記の4種類があります。

・所得税

・消費税

・住民税

・個人事業税

これらの税金の基本理解に加えて、適切な節税策を講じることで、不要な税金支払いを避け、効率的なビジネス運営を行うことが可能となり、事業運営の安定化にも繋がります。

 

 

個人事業主とは?

個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を営んでいる人のことを言います。 個人で商売を始めるためには、税務署に「開業届」を提出し、事業の開始を申請するだけです。 よく、フリーランスと個人事業主の違いが分からないという話を聞きますが、フリーランスは、特定の企業や組織に属さない働き方です。 フリーランスが税務署に開業届を出すことで、「個人事業主」という税務上の区分となり、税務上のさまざまなメリットを得ることができます。 個人事業主として独立することにより、自由な働き方を選ぶことが可能となりますが、会社員とは異なり保険料の全額負担が生じたり、自分で確定申告を行う必要があります。

 

 

個人事業主が払う税金の種類

前述の通り、個人事業主が支払う税金は、「所得税」、「消費税」、「住民税」、「個人事業税」の4つがあります。 これらの税金は、個人事業主の年間の収入や事業規模によってその納税額が変わります。 それぞれの税金の特性を理解し、知らなかった故に損をしてしまわないよう付き合っていきましょう。

 

所得税

所得税は、個人事業主が1年間(1月1日から12月31日まで)に事業を通じて得た所得に対して課せられる税金です。 所得額が多ければ多いほど税率が上がる累進課税制度であり、個人事業主にとって最も大きな負担となる税金です。 所得とは収入から経費を引いた金額のことで、個人事業主は「総収入金額-必要経費」で計算できます。 所得税の計算は複雑なため、クラウド会計ツールなどを利用して計算するか、もしくは税理士に依頼しても良いでしょう。 注意したい点は、年収や売上の全てに所得税がかかるわけではなく、所得控除ができるものもあるため、後述する節税対策の章を参考にして下さい。 所得税について詳しい解説はこちらの記事をご参照ください。

個人事業主の所得税はいくらかかる?計算方法から払い方まで完全解説!

 

消費税

消費税は、基準期間である前々年の売上が1,000万円を超えた場合、または前年1月1日~6月30日の売上、または給与などの支払いが1,000万円を上回った場合に支払い義務が発生します。 逆に言えば、売上が1,000万円を超えていなければ支払う必要はない税金です。 基準期間とは、納税義務になるかどうかの判定基準となる期間のことで、個人事業主の場合は2年前(前々年)となり、例えば、2021年の売上高が1,000万円を超えた場合、課税義務が発生するのは2023年となります。 売上が1,000万円を超えるということは、事業が一定の規模に達しているという証明になるため、決して悪いことではありません。 消費税の計算方法には、「一般課税」と「簡易課税」の2パターンがあります。

 

一般課税

売上に含まれている消費税から、事業者が仕入や経費で支払った消費税を差し引いて計算する方法で、計算式は以下のようになります。

課税売上高(受け取った消費税)× 10% or 8% -仕入額(支払った消費税)× 10% or 8% =納付する消費税

例) 課税売上高が1000万円、仕入額が300万円とすると、納付する消費税額は以下のように算出できます。

1000万円×10%-300万円×10%=70万円

 

簡易課税

基準期間の売上が5,000万円以下の場合のみ選べる計算方法で、実際に支払った消費税額ではなく、仕入れなどにかかる消費税を「みなしの税率」で計算する方法です。 そのため、仕入れなどにかかる消費税額が少なく、みなし税率で計算したほうが大きくなる場合は節税対策になるでしょう。 計算式は以下のようになります。

課税売上高×10%-(仕入額×10%×みなし税率)=納付する消費税

また、みなしの税率は業種ごとに異なりますので、ご自身がどの業種に当てはまるのか確認して下さい。

第1種事業(卸売業):90%

第2種事業(小売業):80%

第3種事業(農業・漁業など):70%

第4種事業(第1種~第3種、および第5種、第6種以外の事業)(※):60%

第5種事業(運輸通信業、金融・保険業、サービス業):50%

第6種事業(不動産業):40%

例) 先ほどと同様に課税売上高が1000万円、仕入額が300万円とし、事業が第5種事業であったとすると、納付する消費税額は以下のように算出されます。

1000万円×10%-300万円×10%×50%=35万円

 

住民税

確定申告後に、個人事業主の事務所がある都道府県、市町村から届く納付書に従って、住民税を支払います。 6月、8月、10月、1月の年4回払いか、6月の1回払いかの、いずれかを選びましょう。 住民税は、所得税とは別に課される地方税で、住んでいる場所に応じて税額が異なります。 住民税について詳しい解説はこちらの記事をご参照ください。

個人事業主が支払わなければいけない「住民税」っていくら?計算方法と事例で分かりやすく解説

 

個人事業税

個人事業税は、事業内容に応じて課される税金です。 納付は8月と11月の年2回で、8月に各都道府県から送付される納税通知書に従って各納期に納めます。 計算式は以下のようになります。

(所得の額-290万円)×税率=個人事業税の額

税率は3~5%の間で、業種によって異なります。 また、所得の額は、前年の1月1日~12月31日までの事業の総収入額から必要経費を差し引いた金額で、以下の計算式で求めることができます。

収入金額-必要経費-青色申告特別控除=所得の額

よって、事業所得が290万円までであれば納税の必要はありません。 また、「作家・漫画家」などの文筆業や、「システムエンジニア・プログラマー」「通訳・翻訳業」など個人事業税の課税対象とならない業種もあります。

 

 

個人事業主の3つの節税対策

 

 

税金を適正に納めることは大切ですが、同時に税制の仕組みを理解し、節税対策を講じることも重要です。 個人事業主が実践できる主な節税対策として、所得税の節税、青色申告、少額減価償却資産の特例の3つをご紹介します。

 

所得税の節税

所得税額の計算式は、まず以下の計算式で、必要経費や所得控除を差し引いた、「課税対象となる所得金額」を算出します。

①所得の合計額-必要経費-各種控除=課税所得金額

次に、「課税所得金額」に、あらかじめ決められている税率を掛けたものが「基準所得税額」を算出します。

②課税所得金額×税率-課税控除額=基準所得税額

また、東日本大震災からの復興施策として、2037年までは復興特別所得税が課税されますので、以下の計算式で「復興特別所得税額」を算出します。

③基準所得税額×2.1%=復興特別所得税額

上記の②と③を出したものが「所得税額」となります。

④基準所得税額+復興特別所得税額=所得税額

つまり、経費を漏れなく申請して、各種控除を利用することで、課税される所得金額を減らし、結果として所得税を軽減できるということです。 例えば、経費は事業を行う上で掛かった費用が該当するため、旅費交通費、接待交際費、水道光熱費、オフィスの賃料など、これらはすべて経費として計上できます。

 

所得控除

所得控除は、一定の金額を課税対象となる所得から差し引くものです。 例えば、医療費、生命保険、地震保険、基礎控除などがありますので、国税庁のサイトより最新情報を確認しておきましょう。

 

税額控除

税額控除とは、課税される所得金額から計算された所得税額から、一定の金額を控除するものです。 例えば、寄付金、住宅借入金、配当金などが対象となり、それぞれ金額によって控除額が異なります。 こちらも同様に国税庁のサイトから具体的な控除額を確認することができます。

 

青色申告をする

青色申告は、白色申告に比べて税制上の優遇措置が多いため、節税策として有効です。 具体的には、所得控除額が増える、経費の損金が繰り越し可能になるなどのメリットがあります。 青色申告をするには、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出し、承認を得る必要があります。 青色申告のメリットを詳しく見ていきましょう。

メリット1

青色申告をすると、事業所得を10万円から最大で65万円まで控除することができます。

 

メリット2

支払った給与を必要経費として計上することが可能になります。

つまり、従業員の給与をすべて経費にすることができ、それによって所得金額を減らすことができます。

 

メリット3

青色申告では赤字を最長で3年間繰り越すことができます。 これにより、将来的に利益が出た年に赤字を差し引くことで、その年の所得税を節約することが可能です。

 

少額減価償却資産の特例

中小企業者については、一定の条件を満たすことによって、10万円以上30万円未満のものを一括で経費として処理できる「少額減価償却資産の特例」があります。 この特例を黒字の年にうまく活用すると、対象となる固定資産の費用を一括で必要経費にできますので、大きな節税効果が見込めます。

 

 

まとめ

個人事業主が支払う税金は、それぞれの異なった計算方法や支払い方法が存在するので混乱するかもしれません。 しかし、適切な知識を持つことで、必要以上に税金を払うことなく、また適法に節税を行うことが可能です。 節税策は多く存在しますが、その中でも特に効果的なものは所得税の節税、青色申告、少額減価償却資産の特例です。 これらを理解し、活用することで個人事業主としての支出を減らしていきましょう。

 

 

 

 

 

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